スモールビジネス経営者に必要なのは「節税」より判断軸
スモールビジネス経営者が資産形成を考える際、多くの方が最初に気にするのは「節税」です。
しかし、節税だけを目的にしてしまうと、本来残すべきお金を失ったり、自分に合わない金融商品や仕組みに振り回されたりする可能性があります。
経営者にとって重要なのは、単に税金を減らすことではありません。
会社と個人のお金をどう分け、どこまで守り、どこから攻めるのか。
その判断軸を持つことです。
今回は、銀行員、鉄道運転士を経て独立し、金融商品を販売しない中立の立場から「お金の判断軸」を提供している、判断軸FP/Core Compass代表の徳山智秀氏に、スモールビジネス経営者が資産形成で押さえるべき考え方について解説していただきます。
相談現場で毎回聞かれる質問
「会社と個人、どっちでお金を貯めるのが正解ですか?」
私は東京を拠点に、全国のお客様とオンラインで相談を行っている独立系ファイナンシャルプランナーです。
経歴は少し変わっていて、銀行員から鉄道の運転士に転職し、その後独立しました。
そして最大の特徴は、保険も投資信託も不動産も、金融商品を一切売らないことです。
商品を売らないからこそ、どの選択肢に対しても中立に「判断の軸」だけをお渡しできる。
それが私の仕事です。
その立場から相談を受けていて痛感するのは、スモールビジネス経営者の資産形成の失敗は、知識不足ではなく「判断軸の不在」から起きているということです。
現場で見てきた2つの失敗パターン
失敗①:節税が目的化する
かつては、解約返戻率の高い定期保険で保険料を損金にする「節税保険」が定番でした。
しかし、2019年の国税庁による通達改正、いわゆるバレンタインショックで、この手法は事実上封じられました。
そもそもあれは節税ではなく、課税の先送りに過ぎず、出口では結局課税されます。
それでも「損金になるなら」と複雑な商品や仕組みに飛びつき、結果として納税額より多くのコストを払っている。
そんなケースを何度も見てきました。
節税は手段であって、目的ではありません。
「その支出は、税金を払った場合と比べて手元に多くのお金を残すのか?」
この一つの問いで、判断の大半は片づきます。
失敗②:YouTubeの切り貼りで自己流運用する
発信者には、それぞれポジションがあります。
つまり、売りたい商品や誘導したい方向性があるということです。
それを知らずに情報をつまみ食いして組み合わせると、方向性のバラバラなポートフォリオが出来上がり、試行錯誤だけで数年が過ぎていきます。
情報は無料で手に入る時代です。
しかし、自分の状況に引きつけて取捨選択する軸だけは、外からは手に入りません。
経営者ほど直撃する「年2.8%の目減り」
もう一つ、相談現場で「そこまで考えていなかった」と言われるのがインフレです。
現在、物価上昇率が3%前後であるのに対し、預金金利は0.2%程度です。
この差は約2.8%です。
つまり、銀行に置いたままのお金は、1年で約2.8%ずつ実質的な価値を失っている計算になります。
1,000万円の内部留保なら、年28万円が静かに溶けている。
ここまで具体的に理解している経営者は、リテラシーの高い方を含めても驚くほど少ないのが実感です。
個人よりも現預金を厚く持つ経営者は、実はインフレの影響を最も大きく受ける立場です。
「貯金しておけば安心」はデフレ時代のルールであり、今はルール自体が変わっています。
「会社と個人」両面の最適化の考え方
では、冒頭の質問に戻ります。
「会社と個人、どっちでお金を貯めるのが正解ですか?」
私がお伝えしている判断軸はシンプルです。
会社のお金は「守り」
事業の生命線は手元流動性です。
まず固定費の6か月〜1年分を現預金で確保する。
ここは、インフレで目減りしても持つべきコストと割り切ります。
運転士時代に叩き込まれたのは、「まずブレーキを確認してから発車する」という順番でした。
資産形成も同じで、守りの確認より先にアクセルを踏んではいけません。
経営者個人のお金は「攻め」
会社に必要以上の現預金を寝かせるより、役員報酬の設計を通じて計画的に個人へ移し、小規模企業共済・iDeCo・NISAといった、経営者だからこそ使える制度で長期運用に回す。
この「会社は守り、個人で攻め」の役割分担が、税負担とインフレ両方への合理的な備えになります。
なお、役員報酬や法人税務の具体的な実行は、税理士との連携領域です。
私の役割は、その手前の「何のために・いつまでに・どこまでリスクを取るか」という判断軸を整えることです。
まとめ:正解は商品ではなく「順番」
スモールビジネス経営者の資産形成に、万人共通の正解商品はありません。
しかし、正解の「順番」はあります。
①会社の守りを固める
②個人へ計画的に移す
③制度を使って長期で増やす
この順番と、節税・情報・インフレへの判断軸さえ持てば、迷いの大半は消えます。
もし今、会社と個人のお金の置き場所に迷いがあるなら、商品を勧められる心配のない場所で、一度判断軸を整理してみてください。
エキスパーツ編集部より
徳山智秀氏は、金融商品を販売しない中立の立場から、経営者自身が「お金の判断軸」を持てるよう支援しているFPです。
「会社は守り、個人は攻める」という整理は、スモールビジネス経営者にとって非常に実践的な考え方といえます。
資産形成、住宅ローン、金融教育、ライフプラン設計について、自分自身で納得して判断したい方は、一度、徳山氏に相談してみてはいかがでしょうか。
執筆者:徳山智秀(判断軸FP/Core Compass 代表)。AFP・住宅ローンアドバイザー。銀行員、鉄道運転士を経て2023年に独立。金融商品を販売しない中立の立場から、「お金の判断軸」を提供するコンサルティングとサブスクリプション型金融教育サービス「Core Compass」を運営。
編集:ハイタッチ・マーケティング有限責任事業組合 職務執行者 柳澤研
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