小規模事業者の顧問弁護士の選び方
~何人から必要?相談のタイミングと選ぶポイントを弁護士が解説~
「顧問弁護士は大企業が置くもので、うちのような小さな会社には関係ない」。そう考えている経営者の方は少なくありません。しかし、従業員が数名の会社や一人社長の会社でも、法的な問題は日常的に起きています。
私は、ベンチャー・スタートアップを中心に、資金調達やM&A、日々の契約・労務の相談まで、企業の法務に携わってきました。限られた人数と時間の中で事業を伸ばそうとする経営者の方々と向き合う中で、法務は「大きくなってから整えるもの」ではなく、「小さいうちから備えておくほど、後の選択肢が広がるもの」だと実感しています。この記事では、スモールビジネスの経営者が顧問弁護士をいつ、どのような基準で選ぶべきかを解説します。
小規模事業者でも法的問題は身近にある
規模が小さくても、事業を営む以上、次のような場面で法律が関わってきます。
- 業法規制:飲食、美容、建設、人材紹介、中古品販売など、許認可や届出が必要な事業は多く、知らずに営業すると行政処分や刑事罰の対象になり得ます。許認可や届出の必要がない業種でも、必ず契約者に提供しなければならない情報や、禁止事項が個別に定められている業種もあります。
- フリーランスへの業務委託:デザイナーやライターなどに仕事を依頼する場合、いわゆるフリーランス新法により、報酬額や業務内容などの取引条件を書面等で明示する義務があります。
- 広告表現:ホームページやSNSで「No.1」「絶対に効果がある」といった表現を使うと、景品表示法や薬機法、特定商取引法などとの関係で問題となることがあります。
その他にも、メルマガの送信、個人情報の取扱いなど、検討すべき事項は多岐にわたり、いずれも「うちは小さいから大丈夫」とは言えない分野です。問題が表面化するのは、トラブルや行政からの指摘を受けた後であることが多く、その時点では対応の選択肢が限られてしまいます。
契約書・利用規約は「備え」として整える
一般消費者向け(toC)のサービスでは、利用規約が「サービス利用時のルールブック」になります。返金、キャンセル、免責、禁止事項などを事前に定めていなければ、万が一トラブルとなった際に、適切に自社を守れないことがあります。
法人向け(toB)の取引でも、金額が大きい、継続的に取引する、自社のノウハウや情報を預けるといった重要な取引では、契約書を整備しておくべきです。口約束や、相手方の雛形をそのまま受け入れることで、後になって過度に不利な条件に気付くケースは珍しくありません。
資本政策は「取り返しがつかない」からこそ早めに相談を
特に注意していただきたいのが、第三者から出資を受けて株式を発行する場面です。株式を渡せば、議決権や配当、経営への関与といった権利も一緒に渡ることになります。一度発行した株式を取り戻すのは容易ではなく、後から「創業者の持株比率が下がりすぎた」「意図しない株主が入った」と気付いても、やり直しがきかないことが多いのです。
出資を受ける前の段階で、株主間契約の内容や持株比率の設計について弁護士に相談しておくことを強くお勧めします。
従業員何名から顧問弁護士は必要?
「従業員が○名以上なら顧問弁護士を」という明確な基準はありません。大切なのは人数ではなく、事業内容と、法的リスクの大きさです。
たとえば従業員がゼロであっても、許認可が必要な事業や、個人情報を大量に扱うサービス、外部から出資を受ける予定のある事業であれば、早い段階で弁護士が関わる価値があります。反対に、従業員が多くても、定型的な取引だけで事業が完結している場合は、必要になる場面は少ないかもしれません。
まずは、個別の相談事項が出てきた際に、スポットの相談に対応してくれる弁護士を持つことで足りると思います。そして、目安としては、契約書チェックが日々の業務の負担になってきたとき、もしくは、毎月何かしら法的に相談したいことが出てくる状態になったときが、顧問契約を検討するタイミングです。単発の相談を繰り返すよりも、事業の内容を理解している弁護士に継続的に相談できる方が、的確で早い対応が期待できます。
相談事項がなくても「月1回の定例ミーティング」を
相談したいことが特にない場合でも、顧問弁護士と定期的に話す機会を持つことには効果があります。
経営者は、日々の業務の中で「これは法的に問題かもしれない」と気付けないことがよくあります。事業者の側があまり重視していない事柄でも、弁護士から見ると、契約や規制の観点で確認しておくべき事項が含まれていることがあるのです。
そこでお勧めしたいのが、月1回程度の定例ミーティングです。最近の取引、新しく始める施策、スタッフの採用や退職といった近況を話すだけでも、弁護士が「その点は一度確認しましょう」と拾い上げることができます。問題が起きてから対応する「事後対応型」から、問題を未然に防ぐ「予防型」へと変えていくことが、会社のリーガル面を強くすることにつながります。
自社に合った顧問弁護士を選ぶポイント
選ぶ際に確認しておきたいポイントは次のとおりです。
- 自社の業種や課題に近い分野の経験があるか:弁護士にも得意分野があります。自社の事業に関連する相談実績があるかを確認しましょう。
- 事業の規模や成長段階を理解してくれるか:大企業と同じ水準の体制を求められても、小規模事業者には現実的ではありません。限られた人員や予算の中で、「今、優先すべきこと」と「後回しにしてよいこと」を整理し、事業の成長に合わせて法務を整えていく提案ができる弁護士が望ましいでしょう。
- 相談しやすく、連絡が取りやすいか:メールやチャットで気軽に相談できるか、返信の早さはどうかは、顧問契約の使い勝手を大きく左右します。
- 説明が分かりやすいか:法律用語を並べるだけでなく、経営判断に使える形で説明してくれるかを見てください。
- 顧問料と対応範囲が明確か:月額の顧問料に何が含まれるのか(相談回数、契約書チェック、定例ミーティングなど)を事前に確認し、自社の予算に合うかを見極めましょう。
- 「できない」ことも率直に伝えてくれるか:自社の事業に必要な分野が専門外の場合に、適切に他の専門家を紹介してくれる弁護士は信頼できます。
まずは無料相談やスポットでの依頼を通して、弁護士との相性を確かめてみることをお勧めします。
まとめ
小規模事業者であっても、業法規制、業務委託、広告、メルマガ、個人情報、契約書、資本政策など…法的な判断が必要な場面は数多くあります。顧問弁護士を置く時期は人数で決めるのではなく、契約書チェックが日々の業務の負担になってきたとき、もしくは、毎月何かしら法的に相談したいことが出てくる状態になったときが一つの目安です。相談事項がなくても定例ミーティングを設ければ、気付いていないリスクを早めに見つけることができます。事業を安心して成長させるために、頼れる弁護士を早めに見つけておきましょう。
PRESTO法律事務所
共同代表弁護士 石原亜弥
ベンチャー・スタートアップを中心に、企業の法務相談や社外役員としての業務に携わる。資金調達、M&Aのほか、契約、知財・労務・コンプライアンス等に関する企業の日常的な法務相談に対応している。
エキスパーツ統括事務局より
本記事は内容を審査のうえ、推薦掲載しております。
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PRESTO法律事務所 公式サイト
寄稿:PRESTO法律事務所 共同代表弁護士 石原亜弥
編集:ハイタッチ・マーケティング有限責任事業組合 職務執行者 柳澤研
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